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　　　ミトラ＜ＭＩＴＨＲＡＳ＞

画　　　面		内　　　容
	１	タイトル　遙か遠い世界の物語　一人の男の話をはじめよう。 ※本ストーリーは宗教や歴史とは一切の関係がないフィクションです。
	２	惑星トレスの内乱ゾーナ星域２７３５　惑星トレスに勃発した内戦は次第に拡大し、　戦禍は惑星間レベルに達した。
	３	空爆　主戦場となったトレスでは植民惑星からの物資が投入されたこともあり、惑星全域にわたっていつ果てるともない消耗戦が繰り広げられていた。
	４	市街戦　市街戦では一般人が無差別に殺害され、統制を失った部隊が略奪を行っていた。
	５	ミズラの一家　郊外で略奪を受けた一般人の家。　　父母が殺害され、ミズラという少年が兵士の目を逃れて一人生き残った。

	６	下水道生き残った少年を待っていたのは飢えと死だった。　力の弱い子どもが生きていけるところは人目につかない地下下水道だけだった。　飢えた人々は犬やネズミ、流れてくる死体まであさって食べていた。
	７	弱肉強食　そこはあらゆるものの吹きだまりだった。　少しでも力のあるものが勝者だ。　非力なものから死んでいった。　人は生きるためにはどんなことでもする。
	８	生き残るため　ミズラも人を殺した。　人を殺さなければ食べ物は手に入らないようになっていた。　強いものが生き残る。　弱いものは死ぬ。　それ以外に何があるというのだ。
	９	武器の調達屋　下水道で数年過ごしたミズラは戦場で放置された銃や弾薬を回収して転売することで糧を稼ぐようになっていた。　雇われて戦場に出ることもあった。
	10	傭兵になる　兵器の知識を生かしてミズラは傭兵になった。　新参の傭兵はいつも最前線だった。　砲弾の破片や放射線を浴びながらの戦いだったが、　彼は運よく生き延びていた。
	11	戦車戦　歩兵として、砲兵として、そして戦車兵として、補充兵が必要になるとどこへでもまわされた。　燃える戦車からはい出して九死に一生を得たこともあった。

	12	戦いに明け暮れる　ミズラは死を恐れなかった。　彼には守るものがなかった。　自分の命でさえ護る価値があるとは思っていなかった。
	13	腕を失う　戦いで腕を失ったが、過去の戦績によってすぐに義手がつけられた。　飢えて死ぬ子どもたちが大勢いるというのに人を殺すために多額の金をかける世の中は異常だが、ミズラにとって下水道の生活は遠い昔話になっていた。
	14	傭兵の夜　彼が今まで殺した兵士の中に　両親を殺害した奴がいたかもしれない。　また、もしかすると自分の隣でそいつが一緒に銃を撃ち、酒を飲んで笑っているのかもしれなかった。　だが、今の彼にはどうでもいいことだ。
	15	全身改造　両腕、両脚そして内蔵とミズラの体はほとんど機械に取り替えられていった。　そして最後に脳の情報も全て人工脳に移植されて生体部分はなくなった。ミズラの心はどうなったのだろうか。
	16	最前線の突撃部隊　生存率が高い改造部隊は最も熾烈な戦場に送られる。　人間では不可能な作戦が立案され、不眠不休の激戦が続けられた。　回収されなければ永遠に沈黙するだけだ。　人間となんら変わらない。
	17	別の星へ　戦争は植民星でも展開していた。　最前線は常に最強の兵士を必要としていた。　戦績の上がらないものは破損してもうち捨てられた。　生きるためには敵を殺すしかない。

	18	過酷な戦い　汎用兵器から重火器まで扱える利便性から改造兵士たちの過酷な戦いは続いた。　すでにミズラは最古参となり、英雄視されるようになった。　しかし、数十年もたつと脳内のデータ処理に異変が生じてくるらしい。
	19	限界をむかえる　ミズラは発作が起こると、敵味方の区別なく殺すようになった。　捕縛されたミズラはついに長かった兵役を解かれた。
	20	追放刑　幾多の戦役をくぐり抜けた伝説の兵士ミズラは永久追放刑となった。　星域に回帰することのない軌道に射出されたポッドは永久に宇宙をさまようだろう。
	21	惑星不時着　気の遠くなるくらいの永い時間が経過した。　とある惑星の上にポッドは激突した。　大気圏突入時は1000度にもなったであろう船内で生き延びた搭乗員が雪上にはい出してきた。　かつてミズラと呼ばれた男だ。
	22	惑星の住人　星の生物はひ弱で原始的だ。　しかも暴力的で残忍であり、好きになることはできなかった。　彼は自分の名前すら覚えていなかった。　過去には、そして未来にも興味はなかった。
	23	ミトラ　いくあてもなく彷徨う名もなき男。　人々は食物もとらず、眠りもしない彼を恐れ、古い土着神の名をとってミトラと呼んだ。　ミトラの名はユダヤにわたりメシアの原型となり、後には仏教との融合で弥勒となったといわれる。

	24	遠征部隊　ある時一人の若者についていったことがあった。　その男に血の臭いをかぎつけたからだ。　彼はペルセポリスへ向かうところだった。　ミトラは血や煙の中に身をおけば何かを思い出せそうな気がした。
	25	砲撃　異世界の超兵器が火を噴いた。　王都ペルセポリスは一瞬にして焼き尽くされた。
	26	王都炎上　炎に焼かれる人間たち。　泣き叫ぶ女、子どもたち。　その悲鳴の中にミトラはどこか昔、同じような場面に自分がいたことを確信した。
	27	監視衛星　この兵器のエネルギーは惑星の近くを警戒していた監視衛星にとらえられた。　戦争が終わっていたゾーナ星域の委員会は、別の惑星の生態系に影響を与えないように殺人兵士の処理を決定した。近くの部隊が到着するまでに300年はかかるとしても。
	28	時と語る日々　昼は砂と、夜は星と語る年月がすぎていった。　ペルセポリスからは緑が消え、ローマがおこりカルタゴが滅びた。
	29	ミトラ西へ　ミトラは西へと足を運んだ。　武器のエネルギーはとっくにきれていた。　彼の体ももうじき動かなくなるだろう。　陽の落ちる方向へ移動したのは気まぐれだったかもしれない。

	30	ヨルダン川のほとり　ヨルダン川のほとりで一人のラビが説教をしていた。　彼の話はミトラの思考回路には存在しない理論だった。　人を愛する・・・・。　　　　　　　考えられないことだ。　敵を許す・・・・。　　　　　　　脳がおかしいのだろうか。
	31	ミトラの夢ミトラは不思議な夢を見るようになった。脳内データを移植した時にコピーされた情報に違いないが遠い子ども時代の記憶のようだ。非実用的な記憶なのだが・・・。千数百年も出たことがない涙が流れたような気がした。それはあの男のせいに違いない。
	32	山上の垂訓　男の話は相変わらず理解不可能だった。　生きているものは必ず死ぬし、力のあるものが生き残るのは当然のことではないのか。いったいなんだというのか。そのころゾーナの処理部隊が地球軌道に到達した。
	33	捕獲部隊との接触　処理部隊はまず彼の拘束を試みた。　捕獲して本星に連れ帰ろうとしたのだ。　武器を持たないミトラは身一つで戦うしかなかった。　ミトラの戦闘中、あの男は裁判にかけられていた。
	34	ヴィア・ドロローサ　人々の嘲笑と罵声を浴びながら男は一歩一歩ゴルゴタに向かっていた。　磔刑の横木を担ぎながら大工を生業としていた男はかつて経験したことのない重さに足をとられた。
	35	捕獲部隊殲滅　それは自分の星の仲間であったかもしれない。　しかしミトラは捕まりたくなかった。　生きていく。それは彼の本能なのだ。　生きるためには殺すしかない。　ミトラは追っ手を全て破壊した。

	36	救いはどこに　あの男の弟子の知らせを受けたミトラは処刑場へ急いだ。　彼の話をまた聞いてみたかった。　救い出したかった。　・・・しかし、異星の男をなぜ救いたいのだろう。
	37	磔刑　男はすでに十字架の上だった。　罵りの叫び声をあげていた人々が求めたのはナザレの男ではなく、直接的な力でローマ兵を打ち砕くミトラのパワーだった。　しかし、そのミトラはこの非力な十字架の男にすがろうとしている。
	38	破壊指令　捕獲をあきらめた処理部隊は軌道上に到着したビーム兵器に指令を与えた。　地球が自転し、ターゲットが迫る。
	39	消滅　高出力ビームが大気を貫いて襲いかかった。　ミトラは一瞬で蒸発した。
	40	ゴルゴタ　ゴルゴタを照らした光はやがて消えた。　ミトラは他人のために何かをしてやることができなかった。　しかし、A.D.30　ここに神は生まれた。
	41	あとがき　この物語の原作は昔描いた絵コンテが下書きのリメイク版です。　コンテの下書きがあったので楽しみながら書き起こしました。　前半と後半ではクオリティが違いますが、練習成果とご了承ください。なお、コンテ作画にあたり遺跡や風景、衛星写真を一部参考にさせていただきました。最後までおつきあいいただき、ありがとうございました。